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ジュゴンが今も沖縄に生息していることが科学的に証明されました

発見の内容

日本の環境省や沖縄県、世界のIUCNなどでも絶滅危惧種に指定されている大型海棲哺乳類のジュゴンは、その分布の北限が琉球列島と言われ、特に近年は生存の証拠がなく、一部で沖縄地域では絶滅した可能性が高いとの論文も発表されていました。しかし、今回、野外で採取された糞のDNA分析や遊泳個体の目撃情報から、現在も琉球列島に生育していることを科学的に突き止めました。この研究は、沖縄県環境科学センターを中心とした研究グループに、沖縄高専の職員も協力して遂行され、2024年4月にScientific Reports誌(Springer-Nature社)にて公表されました。

 

今回の研究では、沖縄島北東部の久志(沖縄高専のある辺野古の直ぐそばです)と宮古諸島の伊良部島佐和田から採集された糞から、ジュゴン由来のDNA配列を確認しました。また、2010年以降のジュゴンや喰み跡の目撃情報などを整理したところ、ジュゴンが琉球諸島の広い範囲(沖縄島周辺海域、宮古諸島、八重山諸島)に生息している可能性が確認されました。本研究で確認された沖縄島周辺での分布は、2019年の今帰仁村での死亡個体確認以来の貴重なものです。また宮古諸島での分布については、約半世紀ぶりの再確認となる貴重なものです。

2019年9月26日に伊良部島の沿岸地域で確認されたジュゴンと思われる海洋動物の写真。吉浜崇浩氏がドローンで撮影(今回の論文“Ozawa et al. (2024)Scientific Report”より)

 

内容の詳しい解説:

 

●ジュゴンとは

皆さんは沖縄にジュゴンが棲んでいたことをご存知でしょうか。
ジュゴンとは、海で生息する哺乳類で海棲哺乳類とよばれています。

哺乳類の仲間は陸上で進化したので、現在海に生育しているジュゴンの祖先もかつては陸上で生活していました。しかし、進化の過程で生活の場を海に移し、同じく陸上から海に戻った陸上植物の仲間である海草を食べて生活しています。

イルカやクジラも海棲哺乳類ですが、ジュゴンとはあまり関係がありません。ジュゴンに近い仲間にはマナティがいますが、大西洋に生育しており日本近海には生育していません。

 

●ジュゴンが生育している証拠

数の少ないジュゴンを目撃・撮影することはなかなか難しいのですが、ジュゴンは生育していると様々な痕跡を残します。そのうちの一つが、糞です。ジュゴンの糞は、同じ海草を食べるアオウミガメのものととてもよく似ており、肉眼で区別することが困難です。しかし、今回の研究では沖縄近海で発見された大型動物のものと思われる糞に含まれているDNA配列を解析することで、その糞がジュゴンものであることを識別することができました。この糞から検出されたジュゴンのDNAはジュゴンが今も琉球列島に生育していることを示す重要な証拠となりました。

ジュゴンが残す痕跡のもう一つは、海草群落に残る食み跡(ジュゴントレンチ)です。今回の研究では、この食み跡の分布記録の他、直接の目撃情報もまとめられています。興味のあるかたはぜひ下の論文をご覧ください。

 

論文の出典:

発表論文 (無料で見ることができます。英語です)
 リンク:https://www.nature.com/articles/s41598-024-58674-8
 掲載先:国際オンライン専門誌「Scientific Reports」(Springer-Nature社)
 題 目:Fecal DNA analysis coupled with the sighting records re-expanded a known distribution of dugongs in Ryukyu Islands after half a century

著 者:小澤宏之:(一財)沖縄県環境科学センター総合環境研究所 所長
 吉浜崇浩:(株)蟹蔵代表取締役
 宜志富紹吾・渡邊那津季:沖縄県環境科学センター 
 市川光太郎:京都大学フィールド科学教育研究センター准教授
 佐藤圭一:(一財)沖縄美ら島財団水族館管理部・事業部統括
 渡邊謙太:沖縄工業高等専門学校
 高野克彦・落合洋介:日本放送協会(NHK)
 山中裕樹・丸山敦:龍谷大学先端理工学部教授

 
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最終更新日:2024.05.22